新銘柄豚(フジキンカ)について
フジキンカは、畜産技術研究所(平成17~19年度)によって開発された新しい銘柄豚です。この豚は、県で育成した産肉性の高い「フジロック」と浙江省から譲り受けた「金華豚」を素材に、DNA分析により金華豚の肉質遺伝子をモニタリングしながら交配して開発したもので、両者の長所を併せ持った高級な肉質が特長の銘柄豚です。

フジキンカの特長

  • 金華豚由来の柔らかい肉質、甘味があり、風味の良い脂肪
  • フジロック由来の霜降り肉、優れた産肉量
  • 金華豚特有の毛色遺伝子でDNA鑑定が可能

新しい農業技術
近年の豚肉に対するニーズは多様化しており、少し割高であっても高品質で安心安全なものが求められてきています。静岡県では1986年に中国浙江省より希少品種である金華豚を譲り受け、これを利用する研究を行ってきました。金華豚は、肉質が大変優れているものの赤肉生産性が著しく劣るといった欠点もあり、その活用はごく一部に限られていました。そこで、金華豚についての遺伝子解析研究の成果を活用し、金華豚の肉質遺伝子を赤肉生産能力の高い本県のデュロック種系統豚である「フジロック」に取り入れ、両品種の優れた点を併せ持った高品質豚肉「フジキンカ」が作出されました。また、高品質で安心安全な豚肉を消費者に提供する技術として、「フジキンカ」のDNA鑑定もあわせて開発されました。

フジキンカの作出方法

  • 肉質に関係する遺伝子の検索

 金華豚の持っている良い肉質の遺伝子の場所を探すため、フジロックとの雑種(F1)を作出し、さらにF1同士の雑種(F2)554頭について遺伝子解析とあわせて、肉質等様々な検査を行い、両者の関連性について調査しました。
その結果、肉質等に関する様々な遺伝子候補が見つかりました。その中で今回注目したのが肉の柔らかさの指数であるシェアバリューです。この遺伝子は、豚の第2染色体上にあり、この遺伝子を金華豚から受け継ぐと肉を噛み切る力が約0.3kg少なくてすむことが明らかになりました。

(2)遺伝子を目印にした豚の選抜
次に金華豚の持つこの遺伝子をフジロックに導入することをおこないました。遺伝子を導入するといっても遺伝子組み換えではなく、通常の交配によって実施します。
具体的には、まず金華豚とフジロックの雑種(F1)を作り、そのF1にもう一度フジ
ロックを交配させます。こうするとその子供はF1よりフジロックに近づく(戻っていく)ので、この交配方法を「戻し交配」と言います。この時、遺伝子解析を行うことにより目的の遺伝子を金華豚から受け継いだものを次の親として選抜します。そして戻し交配を2度行った戻し交配第2世代(BC2)を作ったのち、BC2同士を交配(家系内交配)させます。その結果、金華豚とフジロックの血液割合が1:8でほとんどフジロックに戻っているが、目的の遺伝子だけは金華豚から受け継いだ豚が完成します。つまり、金華豚の肉の柔らかさとフジロックの産肉性の“いいとこどり”をした豚となるわけです。

食味試験結果
静岡大学教育学部に協力していただき、完成したフジキンカの肉を実際に食べて評価してもらいました。対照としたのは三元交雑豚でありブランド豚肉として好評を得ている静岡型銘柄豚です。その結果、開発の目的である「肉の柔らかさ」はもちろんのことジューシー感などでも差が見られ、総合的なおいしさであり好ましいという評価を戴きました。
なお、フジキンカは金華豚の持つ「脂肪の甘さ」も受け継いでおり、一口食べれば違いがわかる肉となりました。

DNA解析による鑑別
フジキンカのもう一つの特徴として、“DNA検査により本物の見分けができる”と言うことがあります。これは開発の過程で、金華豚の持つ「毛の色を黒くする遺伝子」を受け継がせたからです。これは、黒豚と言われるバークシャー種を含む欧米の豚とはっきりと区別できるもので、同じ金華豚とフジロックの交配で生まれた豚でも、この遺伝子を持っている豚は全身が真っ黒になります。この遺伝子を調べることで、一切れの肉となっても本物であることが証明されます。

トレーサビリティーについて
 YSC農場では、全国で初めて豚を個体管理し生産をしています。
人工授精をしてから出産、肥育管理、ワクチン等全て記入し管理しているので、出荷までの生産履歴が全てわかります。

おわりに
近年、テーブルミート用の豚肉としてどこの店舗でも銘柄豚を見かけるようになり、その中で「東京 X」や「鹿児島黒豚」といった全国ブランドの豚肉も現れました。今回開発された「フジキンカ」も“一口食べれば違いがわかる肉”として全国ブランドになれる肉だと確信しています。繁殖性等今後改善していくべき問題も残されていますが、「フジキンカ」が静岡県の養豚振興の起爆剤になることを願っています。